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一度決めた養育費 増額や減額はできる?

はじめに

まだ自立していない子供がいる夫婦の場合、離婚をする際に養育費を定めることになります。

 

しかし、例えば0歳の子の養育費を定めた場合、養育費の支払いは、およそ20年続きます。

 

それほどの長い期間の間には、支払う側、受け取る側の事情が変化し、養育費が足りなくなったり、過大になったりすることもあるでしょう。そのような場合に、養育費の増額や減額をすることはできるのでしょうか。

 

今回は、養育費の増額や減額について、横浜シティ法律事務所の弁護士が解説いたします。

 

 

養育費の増減額を認めるか否かの判断要素

このコラムでは、元夫が養育費を支払う義務者、元妻が子供を監護して養育費を受け取る権利者である場合を想定して解説します。

 

調停や審判はもちろん、協議で養育費を定めた場合でも、元夫には、定められた養育費を支払う法的な義務が存在します。

 

しかし、収入の減少、会社の倒産、再婚、再婚相手との間での養子縁組や新たな子の誕生など、当初予想していなかったことが起きた場合にまで一度定めた養育費の変更を認めないのは、当事者間の公平に反するといえます。

 

そのため、養育費を定めた当時から事情に変更があった場合には、公平の観点から、養育費の増減額が認められることがあります。

 

もっとも、事情の変更があっても、養育費を定めた当時に予想できたものでは、増減額を認めなくても、公平を害することはありません。そのため、当時予想することができなかった事情変更である必要があります。

 

また、多少の事情変更ではなく、当時定めた養育費の金額を維持すると公平を害すると考えられる程度に重要な事情変更があったことも必要になります。

 

まとめると、以下の3点が養育費の増減額を認めるか否かの判断要素となります。

①合意(審判)の基礎となった事情に変更があったこと

②合意(審判)時には、当事者が事情変更を予見できなかったこと

③合意(審判)で定めた養育費の金額を維持することが相当でないといえる程度に重要な事情変更であること

 

では、具体的にはどのような場合に養育費の増減額が認められ、あるいは認められないのでしょうか。以下、具体例をご紹介します。

 

 

具体例のご紹介

収入の増減があった場合

養育費の金額は、夫と妻の収入をもとに算定するのが一般的です。そのため、養育費を定めた時から収入状況に変化があれば、養育費の算定根拠に変化があったとも考えられます。

 

しかし、残業代や各種手当による増減は一時的なものといえますし、ある程度予想ができるため、養育費を定めた当時に考慮されていることが通常です。そのため、多少の収入の増減では、増減額請求は困難です。

 

これに対し、元夫の会社が倒産して職を失ってしまった場合や、元夫が病気で年収が大きく下がった場合、子供が成長して無職だった元妻がフルタイムで働くようになった場合等には、合意当時に予想ができた事情とはいえませんし、大きな収入の変動があります。

このような場合には、増減額請求が認められうるといえます。

 

なお、近々会社を辞める予定であるとか、降格される可能性が高いといった事情を主張しても、通常考慮されません。

将来の可能性ではなく、あくまでも現時点で収入が減少していることが必要です。

 

また、収入が大きく変わったとしても、不当な理由がある場合には、考慮されません。

たとえば、養育費を滞納して給与の差押えを受けた元夫が、差押えから逃げるために退職し、収入が減少したようなケースでは、減額請求は認められないでしょう。

 

権利者である元妻が再婚した場合

⑴ 再婚相手と子供が養子縁組していない場合

元妻の再婚相手と子供が養子縁組をしなければ、その間に親子関係はありません。

この場合、子供を養育する第一次的な義務は、元夫にあり続けます。

そのため、元妻が再婚したからといって、元夫からの減額請求は原則認められません。

 

もっとも、元妻の再婚相手の経済力が高く、事実として子供が再婚相手の扶養を受けている場合、元夫の養育費が減額されることも考えられます。

 

⑵ 再婚相手と子供が養子縁組した場合

元妻が再婚しただけでなく、再婚相手と子供が養子縁組をした場合には、子供を養育する第一次的な義務は、元妻と再婚相手にあります。

したがって、この場合には、原則として、元夫からの減額請求が認められるでしょう。

 

もっとも、元妻の再婚相手に収入や財産がないことも考えられます。そのような場合には、個別の事情にもよりますが、養父となった再婚相手ではなく、引き続き元夫が一定の養育費支払義務を負うことも考えられます。

 

義務者である元夫が再婚した場合

元夫が再婚し、その再婚相手に収入がない場合、元夫には扶養すべき家族が増えることとなります。そのため、養育費の支払に影響する事情が変更されたといえます。

 

もっとも、結婚は一定の交際期間を経てからするというのが一般的です。そのため、離婚後すぐに再婚をした場合には、養育費について合意をした当時、既に元夫が再婚相手と恋愛関係にあったと考えられます。

したがって、離婚後すぐに再婚をした場合には、合意当時、夫は将来的に再婚することを予想できたとして、減額請求が認められないでしょう。

 

とはいえ、離婚後いつまでたっても養育費の負担を考えて再婚できないというのは、それこそ公平性を欠きます。

明確な基準はありませんが、合意当時から交際していたといった事情がないのであれば、離婚後数年を経過してからの再婚であれば、通常は予想できるものとはいえず、減額請求が認められることがあるでしょう。

 

義務者である元夫に子供が生まれた場合

元夫と再婚相手との間に新たな子供が生まれた場合も、再婚した場合と同様に考えることができます。

 

合意当時に再婚相手が妊娠していた場合には、合意当時に元夫と再婚相手との間に肉体関係があったのですから、元夫は再婚相手の妊娠を知っていたか、あるいは予想できたといえます。

 

一方、合意時に再婚相手が妊娠していない場合には、再婚相手が将来妊娠するか否かというのは可能性にすぎず、予想ができない事情といえます。

そのため、離婚後に再婚相手が妊娠し、新たに子供が生まれた場合には、元夫からの減額請求が認められる可能性があるでしょう。

 

義務者である元夫が再婚相手の連れ子を養子にした場合

養育費の合意時に、既に連れ子が存在していたのであれば、離婚後に再婚して養子縁組をしても、離婚時に予見できたものとして、減額が認められない可能性が高いでしょう。

 

一方、養育費の合意成立後に、交際を開始して再婚し、養子縁組をした場合には、減額が認められることもあり得ます。

 

 

当初の合意内容が多額、少額である場合

養育費は夫婦の合意で定めることができるため、たとえば早く離婚をしたい夫が多額の養育費の支払に合意することや、両者の収入で算定することが基本であることを知らない妻が、少額の養育費で合意をすることがあります。

 

たとえこのような場合であっても、当時の事情を基に合意をしたのであるから、合意当時の事情から変更がないのであれば、通常は、増減額請求は困難です。

 

しかし、そもそも算定表から大きく外れた金額での合意である場合には、その合意を維持すること自体が公平に反するとして、増減額請求をすることが考えられます。

この場合には、当時どのような事情で合意に至ったか、合意後の支払状況、合意のとおりに支払いをしようと努めたか等、様々な事情を考慮して、公平に反することを丁寧に主張する必要があります。

 

 

養育費の増減額を求める手続

当事者間の協議

まず初めに、増額や減額を希望する理由を相手方に説明し、協議する方法が考えられます。

 

もっとも、過去に養育費を定めた際に公正証書を作成していたり、調停や審判で取り決めているような場合には、注意が必要です。

このような場合、協議で減額の合意をしても、以前作成した公正証書・調停調書・審判書の執行力(養育費の滞納時に強制執行できる効力)を失わせることはできません。

また、協議で増額の合意をしても、滞納時に増額分の強制執行をすることはできません。

したがって、養育費の増減額を合意した場合には、金額の変更を定めた新たな公正証書を作成することをおすすめいたします。

 

調停

協議による合意が難しい場合等には、養育費の増額・減額調停を申し立てる方法が考えられます。

 

なお、養育費の増額・減額調停は、原則として、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる必要があります。

 

審判

調停で合意ができなければ、調停は不成立になり、審判に移行いたします。

なお、最初から調停ではなく審判を申し立てることも可能ですが、裁判所が調停からやるように指示することもあります。

 

審判では、当事者双方の主張をもとに、養育費の増減額を認めるべきかどうか、裁判官が判断します。

 

審判(裁判官の判断)の内容に不服がある場合、審判の告知を受けた日から2週間以内に、高等裁判所に対し、不服申立て(即時抗告)をすることができます。

 

 

いつからの変更が認められるのか

事情変更があり、養育費の増減額が必要である場合、いつからの変更が認められるのでしょうか。

 

この問題には、①事情変更時、②増減額請求時、③審判時といった考え方があり、事案に応じて決めるべきです。

最近の実務上最も多いのは②増減額請求時ですが、きめ細かく当事者の公平性を検討して①事情変更時(たとえば再婚相手が子供を養子とした時)とした審判も見受けられます。

 

 

おわりに

一度定めた養育費の変更を当事者間で合意することや、裁判所に認めてもらうというのは、簡単なことではありません。過去にはどのような事情で変更が認められたか裁判例を検討し、どのような事情があれば請求が認められるかというのを適切に主張する必要があります。

 

そのため、請求する場合はもちろん請求された場合にも、まずは専門家である弁護士にご相談されることをおすすめします。

 

当事務所には離婚事件や養育費請求について経験豊富な弁護士が在籍しています。

初回相談は60分無料ですので、お気軽にご相談ください。

この記事の監修者

山本 新一郎弁護士 (神奈川県弁護士会所属)

Shinichiro Yamamoto

弁護士の山本新一郎と申します。
私は江戸時代より代々医師を生業としてきた家系に生まれ、幼い頃から病気に悩む方々に対して優しい言葉をかけ、懸命に治療をする父や祖父の姿を見て育ちました。
私が弁護士を志した原点もここにあり、法的トラブルに巻き込まれてしまった方々の負担を少しでも軽くしたいと常に考えております。
病気と同じく、法的トラブルも早めにご相談いただければダメージなく解決できるものです。
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