不動産の頭金やローンを特有財産から支払った場合の財産分与の計算
財産分与
自宅の頭金やローンを特有財産から支払っている場合、財産分与をどう計算すればよいか、弁護士にご相談に来られる方が多くいらっしゃいます。
財産分与は、夫婦が共同して形成した「共有財産」を分けるものです。婚姻前から所有している財産や親族から受けた贈与、相続財産などは、夫婦が協力し合って作った財産といえません。したがって、このような財産は財産分与の対象とはならず、「特有財産」となります(特有財産については後述します)。
頭金やローンの一部を特有財産から支払っている場合(結婚前から、あるいは別居後にローンを支払い続けている場合を含む)には、不動産の現在の価値の一部が特有財産であると考えることができます。この場合、単純に不動産の価値を半分に分けるのではなく、特有財産を考慮したうえで分与額を計算することとなります。
本コラムでは、上記のような場合の財産分与額の計算方法について、具体例を用いながら、横浜シティ法律事務所の弁護士が解説いたします。
なお、財産分与の計算方法については複数の考え方がありますが、今回は代表的な計算方法について、解説いたします。
※財産分与の基本知識については、こちらのページをご参照ください。
目次
特有財産とは?
まず、前提知識として、「特有財産」についてご説明いたします。
特有財産とは、夫婦の協力とは関係なく得た財産のことをいい、代表的なものには、以下のようなものがあります。
①独身時代の資産
・結婚前に貯めた預貯金
※ただし、結婚後に貯めた預貯金と混在している場合、全て共有財産とされることもあります。
・結婚前から持っていた有価証券(株式、投資信託等)
・結婚前に購入した不動産、自動車
※ただし、代金の支払い(ローンの支払い)を結婚後に行なっている場合、その部分は共有財産となります。
②両親等からの贈与
③相続財産
④別居後に得た収入
頭金を特有財産から支払っている場合の計算方法
頭金を特有財産から支払っている場合には、支払った部分は特有財産として扱われ、財産分与の対象になりません。
以下の具体例でご説明します。
・不動産 購入価格4000万円
現在の時価2000万円
・ローン 残ローン1000万円
・頭金 夫が婚姻前に貯めていた財産から300万円、夫の両親から500万円の贈与を受け、合計800万円の特有財産を頭金として支出
上記の場合、不動産の現在の価値は、以下のとおりです。
2000万円(時価)-1000万円(残ローン)=1000万円
夫が特有財産から支出した頭金は、購入価格4000万円の内の800万円ですので、これを現在の不動産の価値に計算し直した金額が夫の特有財産になります。
不動産を売却する場合の分け方
不動産を売却して処理する場合、以下の金額を夫が受け取ることになります(なお、実際には、仲介手数料、登記費用等の諸費用がかかります)。
【特有財産部分】1000万円×(800万円/4000万円)+【共有財産部分】1000万円×(3200万円/4000万円)÷2
=600万円
対して、妻が受け取る金額は、以下になります。
1000万円×(3200万円/4000万円)÷2
=400万円
不動産を売却しない場合の分け方
不動産を売却せずに夫が取得する場合には、不動産以外の財産から400万円分妻が多く取得することになります。
他方、妻が不動産を取得する場合には、不動産以外の財産を600万円分夫が多く取得することになります。
このように、一方が不動産を取得する場合に、財産分与全体のバランスをとるための金銭のことを「代償金」といいます(不動産の代償として支払われる金銭ということです)。
婚姻前から不動産を所有していた場合の計算方法
結婚後にローンを支払っていない場合
婚姻前からローンの負担が無い不動産を所有していた場合、夫婦で協力して形成した財産ではないため、その不動産の価値全てが所有者の特有財産です。
また、結婚後にローンを支払ったとしても、特有財産から全額の支払いをしている場合には、同様に、特有財産といえます。
結婚後にローンを支払っている場合
婚姻前に不動産を所有していたとしても、不動産にローンが残っており、そのローンを婚姻後に得た収入等の共有財産から返済していた場合には、不動産の価値全てが特有財産であるとはいえません。
この場合にも、頭金を支払ったときと同様に、共有財産と特有財産の割合を計算し、財産分与を行うことになります。
以下の具体例でご説明します。
・不動産 婚姻前に夫が4000万円で購入
現在の時価2000万円
・ローン 婚姻前に夫が1000万円返済、婚姻中に共有財産から2000万円返済
残ローン1000万円
まず、不動産の現在の価値は、以下のとおりです。
2000万円(時価)-1000万円(残ローン)=1000万円
夫は婚姻前の自身の財産、すなわち特有財産からローン1000万円を返済しているため、この部分を現在の不動産の価値に計算し直した金額が、夫の特有財産になります。
不動産を売却する場合の分け方
不動産を売却して処分する場合、夫は以下の金額を受け取ることになります。
【特有財産部分】1000万円×(1000万円/4000万円)+【共有財産部分】1000万円×(3000万円/4000万円)÷2
=625万円
対して、妻が受け取る金額は以下になります。
1000万円×(3000万円/4000万円)÷2
=375万円
不動産を売却しない場合の分け方
先ほどご説明したのと同様に、夫が不動産を取得する場合には妻に対して375万円を、妻が不動産を取得する場合には夫625万円を代償金として支払うことで、財産分与全体のバランスをとることになります。
別居後にローンを支払った場合
財産分与の基準時(いつの時点の財産を分与するかという基準のこと)は別居時です。つまり、別居後に得た収入等は、財産分与の対象にならない特有財産となります。
そのため、別居後にローンの支払いをした場合には、通常、自身の特有財産からローンの返済をしたことになります。
したがって、別居後も継続してローンの支払をしている場合には、その部分を特有財産として考慮することになります。
以下の具体例でご説明します。
・不動産 購入価格4000万円
現在の時価2000万円
・ローン 別居時点の残ローン1000万円
別居後に夫が支払ったローン200万円
現在の残ローン800万円
上記の場合、不動産の別居時の価値は1000万円(2000万円-1000万円)です。
そして、別居後に夫がローンを200万円返済しているので、この部分は夫の特有財産と考えます。
不動産を売却する場合の分け方
不動産を2000万円で売却して処分する場合、800万円の残ローンを完済した上で、残額1200万円のうち、夫は以下の金額を受け取ることになります。
【特有財産部分】200万円+【共有財産部分】(2000万円-1000万円)÷2
=700万円
対して、妻が受け取る金額は以下になります。
(2000万円-1000万円)÷2
=500万円
不動産を売却しない場合の分け方
不動産を売却せず、妻が不動産を取得する場合には、夫が代償金として700万円を他の財産から受け取ることになります。
また、夫が不動産を取得する場合には、妻が他の財産から500万円分多く受け取ることになります。
まとめ
以上のように、不動産の特有財産部分を考慮する場合には、それぞれの事情に応じて分与額を計算する必要があります。
また、特有財産であるかどうかは、特有財産であると主張する側が証明する必要があるため、そもそも特有財産の主張が認められるか否かという部分から、法的には難しい争点となる場合も多いです。
そのため、不動産に特有財産部分があると主張したい場合には、ご自身の判断だけではなく、離婚問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
横浜シティ法律事務所の弁護士は離婚事件の実績が豊富ですので、不動産の財産分与についても多くの知見、経験を有しています。
初回相談は60分無料ですので、お気軽にご相談ください。
弁護士の山本新一郎と申します。
私は江戸時代より代々医師を生業としてきた家系に生まれ、幼い頃から病気に悩む方々に対して優しい言葉をかけ、懸命に治療をする父や祖父の姿を見て育ちました。
私が弁護士を志した原点もここにあり、法的トラブルに巻き込まれてしまった方々の負担を少しでも軽くしたいと常に考えております。
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